今年は春から原乳の不足が騒がれ、どうした事かと心配していましたが、梅雨期に入って落ち着きを見せています。
ただ、今春に限った事ではないのですが、中小乳業が原乳不足に悩まされ、
欠品騒ぎになっている時でも大手乳業の貯乳タンクがいっぱいになるほどの原乳が配乳されているといわれ、配乳の独占が進んでいるようです。
中小乳業メーカーではこれほど原乳調達に急迫した年はないとまで言われていますが、生産者乳価は上がっていません(地域による上下はあります)。
原乳には基本的に市場の変化というものは起きない構造になっています。
過去、長い間固定化されていた原乳の流通が、今までにない変化の中で配乳均衡に変化が生じています。
5月・6月の戦争のような原乳調達の騒ぎも、この時期一休みです。
学乳の休止と冷夏、予想外の展開でしたが、今年の9月はどんな需給関係になるのでしょうか。
1000頭を超えるギガファームが国内に現われたことからも解るように、酪農の大型化が進み、北海道ではフリーストールのメガファームが、400軒を超えます。
都府県においてもこの傾向は強く、一部酪農家が1000頭酪農に向け、名乗りを上げています。
変化は大型化だけではなく、自給率100%を目指す酪農経営や、他の農業との複合経営にする所等。
「窮すれば変ず」といわれるように、各地でその特色を生かして経営を変化させています。
今回加入契約していただいた岩手県岩泉酪農グループもまた、特色ある経営を築いています。
日本の名水といわれる岩泉の岩清水、一口飲めば3年長生きするといいます。
こんなすばらしい水のお陰か、この地区の原乳は大変品質がよい。
岩泉牛乳として名を馳せています。購入飼料は極端に少なく、草は100%近く自作自給しています。
特に体細胞数が少なく、牛が健康である事が伺えます。
写真はグループ代表三田地義正氏宅で撮ったものです。
「為替が対US$=80円の時でも開墾をし、畑の土つくりをしていた。輸入乾牧草に頼らない地に足をつけた酪農を実現する」と三田地さんは熱弁します。
岩泉の原乳はおもに関西に運ばれます。
良質な原乳が少ないといわれる関西地区に東北や北関東の良質な原乳を供給することで、また新たな消費者層が生まれる事を期待しています。
原乳需給情勢は依然不足状態が続いている。
各地の乳業組合や協会では今夏に向けての配乳対策会議を開いているが原乳生産の偏りから思うようにはいかないようだ。
今後も地方によっての生産量格差は激しさを増し、原乳確保が難しい都府県もあらわれそうだ。
また、乳業再編事業もいよいよ佳境に入り、この 10年あまりの期間で約3割の乳業が統廃合された。
経営環境は他の一般業種と同様に厳しい条件におかれている。
一方、酪農情勢はBSEの影響から今年4月より死廃牛の処理に一頭平均16000円の実質負担増となるのに加え、
今年4月からは高品質初生牛の7000円/頭や、経産牛肥育等の助成金も打ち切られる。1頭当たり3万円から4万円前後の収入減が見込まれる。
その上来年度から実施される家畜糞尿処理問題、農家はこころ休まる暇も無い。
また、BSEの感染拡大防止策で配合飼料の加工流通ラインが鳥、豚と牛が隔離される。
こうした配合飼料メーカーの設備費も農家の飼糧経費負担として加算されて来るだろう。
合計すれば相当な負担増となり「乳価はほとんど変わらないのになんとなく財布が苦しい」となる。
こう考えると、酪農、牛乳業界はお先真っ暗で将来がないようであるが、そんなときこそチャンスはあるもの。
他者に属さず、他者に惑わされず、自分の考えをしっかり持ち、将来に向けてのビジョンを築きたいものだ。
今回はMMJアルバイト社員を紹介したい。
4トンのミルクローリーの運転をしていただいている。名前はまゆみさん。
10トン、15トンローリーは外注で運行しているので、その補助的集乳をしている。
まゆみさんは車の運転が上手で、安心して任せられる。車も大事にしてくれる。
自分の乗用車は日産の180(ワンエイティー)、もう14万キロも乗っている車だが気に入っているとか。
彼女は検査も丁寧だ。アルコール検査、抗生物質検査はその場で行うことができる。
丁寧さ、几帳面さ、きれい好きという点では男性よりも女性のほうが勝っていると思う。
大型トラックやコンクリートミキサー車さえ女性の採用が目立ってきた、集乳作業こそ女性に向いているように思う。
彼女も最初は緊張していたが、慣れてきたら楽しそうだ。
こんなにチャーミングで働き者だが、未だ彼氏はいないという、ちょっと信じがたい。
独身の酪農家諸君、声をかけてみてはどうだろうか ?
先日、自分が集乳している酪農家グループの牛乳が売れ筋ランキング1位になったと聞いて喜んでいた。
集乳にも気合が入る。
原乳の供給不足は続いています。近年にない供給不足です。
しかしながらこの傾向も今年を過ぎれば一段落来そうです。
スモール市場ではホルオスの供給増、初任牛の予備軍が農家に蓄えられてきています。
牛乳乳製品の消費は横ばい、脱脂粉乳は多量に在庫を抱えています。
酪農家は当分の間、乳価は高値安定と思っていらっしゃるようですが、そんなことはないでしょう。
過去の生産調整の実施例を見ても突然行われています。
現在はまれに見る売り手市場です。今こそ販路を開拓するチャンスなのです。
この名前を聞いただけでも「あれ、どこかで」もしかしてあの松井さんでは…と思って いる方もいらっしゃるのでは。
そうです、生涯検定選奨-都府県13年度第1・第4四半期では金賞を5頭、銀賞を3頭入選、さらに14年度金賞8頭、銀賞5頭入選させた驚異的な酪農家です。
でも会って話をしてみると賞を獲得するために頑張っているというのではなくて、「牛のためにいい牛飼いになりたい」という本人の言葉通り、
本当に牛を大切に飼った結果が賞の獲得に結びついたようです。
牛を大切に、牛が認めてくれるような牛飼いになれれば経済は自然についてくるといいます。
牛と共に働いているのだと思えば当然の理論ですが、そのことを忘れてしまっている 人が多いのではないでしょうか。
松井さんは本当に牛と出会えて良かったと言います。
多くのことを牛は与えてくれるといいます。
松井さんと話していると、この人は牛と心の会話ができるのかもしれない、と思えてきます。
また、できることならストールで牛と一 緒に寝たいといいます。きっと本音でしょう。(奥さんに止められたそうです)
現在80頭の搾乳を近い内さらに増やす予定です。
松井さんは昨年12月10日まで群馬の東毛酪農に出荷していました。
組合を脱退し、MMJと契約した理由のひとつに「酪農組合が農家のためのものではなくなってしまった」といいます。
東毛酪農の中では抜群の成績、出荷乳量でトップでした。
こうした優秀な酪農家に見放される酪農組合が増えています。
酪農家を育て、生産物を有利販売するのが本来の目的であるはずの組織が、酪農家を食い物にし始めている現実があります。
松井さんの話によると、東毛酪農はバブル経済の中で 農業補助金制度を利用し他業種に進出しました。
組合員不在の事業を多方面に拡大し続け、 宅配牛乳会社、焼肉ハウス、不動産事業、アイス製造施設(現在はほとんど稼動していな い、投資金額4億円)、
往復3時間の山奥での牛乳瓶詰め工場直売施設。
その他いろいろ。 ほとんどが公的補助事業です。
それらの事業がことごとく赤字になり、組合員よりはるかに多くの従業員を抱えてしまいました。
その赤字分を昨年の12月の総会において、出荷乳 代より強制補填(出荷乳量に比例した組合への出資)することが決定されたそうです。
「もう俺がいるべき組合ではない」と松井さんが見限ったのも当然かもしれません。
企業酪農が叫ばれる中で松井さんの酪農観は異色ですが、世界的な視野に立ってみれば 松井さんの考えは正統派なのです。
なぜなら、遊牧民の生き方そのものです。
牛を「神様」と呼びます。
生活の糧を与えてくれ、生きがいと愛情を注ぐ牛達を神様と呼びます。
教えを請い、神として慕う対象にまで人間と牛の関係を高める。
私事ですが、小生が牛を始めたきっかけもそれに近いものでした。
世界で最も多くの牛が暮らすインド、 中東やネパール、タイ、どの国に行っても牛が居て人と共生していました。
ヒマラヤ高地 のヤク(高地に住む野生の牛)は体毛が30センチにもなります。
乳は少量しか出ませんが、ネパールのランタン谷ではスイスの牧畜家がヤク乳を原料にヤクチーズを作っています。
直径60センチもあるドーナツ型のチーズは硬く、深い味わいがありました。
そのままでは 歯が立ちませんので、硬いチーズをナイフで削って火にあぶります。
チーズに透明感が出てくると食べごろ、チャンという雑穀の酒と一緒にほおばれば、至福の喜びが口に広がります。
牛と暮らすのもいい、「生涯の仕事として」と思ったものです。
人と牛の関係には何千年という長い歴史があり、互いに助け合いながら暮らしてきました。
松井さんが言う、人と牛が居れば他のものはいらない、という考え方。
牛が欲するものを与えてやるだけ、という飼い方、酪農の基本かもしれません。
もし牛が飼い主を選ぶことができたら、「松井直弘に飼われたい」と 牛に選んでもらえる牛飼いになりたいそうです。
日本中の、いや世界中の牛が1頭でも多く幸せになれるように、 それが私たち関係者の幸せに繋がるといいます。
牛の餌を売る人たち、牛乳をパック詰めして販売する人たち、肉牛を肥育する人たち、それを食べる人たち、
そんなすべての人たちが牛に感謝しながら生活する世の中が来ればいい、と言います。
ここまで読んで、「夢見てんじゃねぇよ」と一笑する方もいらっしゃるかと思いますが、
私には松井さんの話が農業の基本であるように思えます。
かの水戸黄門でさえ米俵に腰を下ろしたため、百姓女から火吹き竹で撲られたそうです。
日本の米作農家にとって米は神様なのです。
「このバチ当たりが」と撲られた黄門様が居たとすれば、牛飼いにとって牛が神さまであるということも、ごく自然な気持ちではないでしょうか。
新年明けましておめでとうございます。
原乳市場では夏に続き、クリスマスシーズンでも大変な不足状態でした。
ここに来てようやく平静を取り戻した感があります。
これから年度末にかけ契約更新のシーズンです。
乳業様、酪農家様ともに荷受、または出荷のご希望があれば早めにMMJまで申し込みください。
一般的な農家は毎年のことで特に変化もなく一年が過ぎますが、世の中、大変な時代を迎えようとしています。
昨年の今ころはどうだったでしょうか。
BSEが前触れもなく一昨年の9月に発表されて肉牛、酪農関係者に物心共に多大な衝撃を与えました。
肉牛価格はまだ回復していません。
全国の酪農家が今までにない不安を抱いたことは確かであったと思います。
何が起こるかわからない時代になっていくようです。
そうした中でもいかにして経営の健全性を保ち生き延びていくか、経営者の手腕が試された1年であったと思います。
過去に組合を脱退し、アウトサイダー酪農を志した人たちはそのほとんどが経営の行き詰まりや生産調整下での増産、増頭のペナルティーがきっかけでした。
現在、群馬を中心に拡大している自主販売組織は過去のものと根本的に違います。
より健全な酪農経営を目指すひとつの方法として、より有利な販売方法を選択した結果です。
上の写真の下田栄氏は、新たにMMJと契約していただきました。
彼が経営する下田牧場は誠に堅実です。
数年前フリーストール牛舎を新築し、現在約80頭を搾乳していますが、ほとんど負債がないといいます。
私は長い間、下田氏とはお付き合いいただいていますが、よく牛舎の建設の時はコンクリート工事だの、水道工事だのと忙しく働いていた姿を覚えています。
聞いてみれば鉄骨の他はほとんど自分で施工したとか、頑張りやさんです。
そんな下田牧場の牛乳は、乳量、乳質とも彼が所属していた組合ではトップクラスです。
今後のいっそうの活躍を期待します。